沿    革


 明治35年3月盛岡高等農林学校が設置され、獣医学教育が開始された。家畜病理学教室の初代教授である可児岩吉はその当時から標本収集に努められたと思われる。開学9年前の馬の皮様嚢腫と黒肉腫の標本が最古のものである。その後今日まで100年の長年にわたって獣医学の教育用・研究用の標本が収集整理され、保管されたことはまことに驚異に値する。その数、約2000点、牛、馬、豚、鶏など産業動物全般にわたり、犬、猫などの伴侶動物も当初から含まれている。標本はそれぞれの動物の重要疾病をほとんど網羅すると共に、各時代を反映し、現在の我が国ではほとんど見られなくなった馬の伝染性貧血、鼻疽など重要な歴史的標本も存在する。
 明治44年に着任された菊池賢次郎教授は特に病理学、寄生虫学に興味を持たれ、数多くの貴重な標本を収集整備された。その種類は現在でもなお日本一である。
 昭和28年度より、特に本学のために文部省から標本維持費が配当され、以来標本瓶の整備、固定保存液の更新、新標本の作製補充などその維持整備に努めてきた。標本採取には菊池賢次郎、三浦定夫、大島寛一、岡田幸助の歴代教授が当たられたことは勿論であるが、展示標本を作製した田中、沼宮内両氏および専攻学生の陰の力は忘れることができない。
 当初、このように貴重な標本が旧木造校舎の一室に保管されていたが、火災の不安を抱えるため、昭和29年当時唯一の鉄筋コンクリート建造物であった教養部理科棟に保管された。昭和38年、現在の標本室が建設され、その後暖房器の設置、床の張り替えなど数回の補修を経て現在に至っている。

可児岩吉教授
1903〜1920在職
菊地賢次郎教授
1911〜1958在職
三浦定夫教授
1952〜1978在職
大島寛一教授
1978〜1992在職
岡田幸助教授
1992〜2010在職



御領 政信(Masanobu Goryo)
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