はじめに
最近は写真技術や映像技術が発達し、 標本を非常に鮮明に記録しておくことができる。 しかし学術的資料として実物がそのまま保存展示されているのに勝るものはない。 岩手大学標本室の中にどれほどの標本が保存されているのか、 かつて大島寛一前教授により標本室台帳の作成が着手され、 512点が既に整理されていたが、 多くは未整理のまま残され、 正確な数字は不明であった。 この度、 文部省からの特別の予算をいただき、 本目録を作成することとなった。 度重なる標本室の引越や、 毎年のホルマリン交換に際して、 破損したものも幾らかあり、 今回改めて全標本の調査をしてみることとした。 学生諸君の応援を得て、 全標本のカードを作成し、 整理したものがこの目録である。 結果的に標本は全体で約2,000点あり、 30%が整理済み、 残りの70%が未整理であったことになる。 標本瓶のラベルに記載のないものも多く、 字が読めなくなっているものもあった。 また学問の進展により、 病名の呼び方や、 寄生虫の名前が変わったものもあるが、 標本が採取されたその時代の考え方を大切にして、 この目録ではあえて修正はしなかった。 今後、 この目録をたたき台として、 研究調査し、 さらに完全なものとしてゆきたい。
当標本室の標本には世界的見地において稀有かつ貴重なもの、 国内的に稀有かつ貴重なもの、 歴史的に貴重なものなどが多数あった。 今回の調査を通じて、 盛岡高等農林、 後の岩手大学の諸先生方がいかに研究と教育に情熱を傾けておられたかがよく分かった。 また標本の収集に全国各地からの多くの協力者、 即ち標本寄贈者がおられたことも知った。 これらは重要な文化遺産であり、 全人類の共通財産である。 データベース化等を行い、 将来とも教育研究その他に、 永くその活用を計らなければならない。 標本室は現在既に過密状態にあり、 最近の標本を追加展示する余地がない。 またさらに標本の学問的価値を高めるために標本の研究調査をする専門の教職員も必要である。 標本室の整備拡充と人員の増加にご理解を切望するものである。 末筆ながら寄生虫の学名等ご指導をいただいた家畜寄生虫病学教室坂本司教授並びに本編集にご尽力をいただいた大学関係者並びに杜陵高速印刷株式会社の各位に深謝する。
1994年11月21日
家畜病理学教室前教授 岡田 幸助 記
御領 政信(Masanobu Goryo)
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